『絵筆物語』あらすじ
高校一年生の僕は朝刊の配達アルバイトの最中、ふいにある画家と遭遇した。
彼が住む家の中は製作途中のキャンバスで埋められており、それは見掛けただけで目が離せなくなる、つまりは魅了されてしまう程に美しい絵画であった。
後日、アートギャラリーでその画家と再会し、彼がイラストレーターとして活躍していることを知り、更にはスケッチブックの中からお金を生むことができる人間であるという事までも知ってしまう。
アルバイトで懸命にお金を稼いでいる僕はそれに違和感を覚えたのだが、奢って貰った以上、お返しをせねばなるまいと手土産を持参し、画家の家を訪れる。
招き入れられた先はアトリエで、あの魅惑的な絵がそこでは制作されていた。画家が席を外した際に、その絵が動く事を見つけてしまい、ふいに腕を差しのばすと、そのままキャンバスの中へと入ることができてしまった。絵の中の幻想的で高尚な雰囲気に飲まれ、僕は身体の全てを絵の中に落としてしまう。
落ちた先は運悪く池の中で、水面まで泳ぐ余裕がなく、僕は溺れかけた時、画家が自ら助けに入り、二人は無事に元の部屋へと戻る。
お金を生むことができる画家は寂しさを埋める為に絵を描いたのだと心中を語った。そして自分の絵が別の空間に繋がることを外部の者が利用しているという事が不本意だとも。
僕は画家の絵を、ひいてはその心を描く画家自身が好きだと告白する。それを受けて画家も心を穏やかにし、二人は心を通わす。
悪意のある依頼者に作品を描いた事に心が折れ、一度は筆を折った画家ではあるのだが、描きたいという気持ちを整理する為に絵を描き続けるようになる。
僕はその様子を端から見守ることにした。
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