『鏡映しの空』あらすじ
高校二年生の夏休み。僕(空沼むい)は好奇心を満たす物との出会いを求めて散策を始め、端正な屋敷へと辿り着く。そして、窓に立つ男性(羽維圭)の姿にときめきを覚える。
この屋敷の上空だけが異様な厚い雲に覆われていたことも僕を魅了する一要素であった。
再び屋敷へ赴くと、偶然にも羽維と庭で出会い、僕は家にあがらせてもらう。二人は日増しに懇意になる中、羽維の自室で一枚の女性の写真を見てしまう。彼に恋心を抱いていた僕は独占欲が生まれてくるのを感じた。
その日、屋敷の庭は夏にも関わらず雪に覆われており、僕の訪問は取り合ってもらえなかった。日頃の行いも迷惑であったのだろうと、羽維邸を後にしようとした時、一人の男性(春風流香)と出会う。彼は羽維の為だけの執事であった。羽維とこのおかしな天候との関係を探るよう、僕は春風から依頼を受け、しぶしぶ再訪すると、いつもの柔和な羽維が出迎えてくれる。僕は策を弄すこともできず、ただ「羽維さんの事が知りたい」と伝えると、羽維は自らの過去を語り始めた。
羽維は過去に両親が薦めた見合いを無下にし、自ら選んだ女性と駆け落ちを決行するも、女性が流行病に掛かったことをきっかけに同棲を解消。続けて両親が事故死、叔父による遺産暴奪を期に、人間不信になり書物へと逃げ込む。その時、不運にも悪魔の書を手にし、天候と心が結ばれてしまう。その後、女性が亡くなった事を知り、命日にはその愛した女性を一人、偲ぶ日としており、それが庭の雪と面会謝絶の理由であった。
後に僕は敬愛する羽維の従者(メイド)となり、幸せを感じていた。春風もまた、羽維が安心して付き合える人間が増えたことを喜んでいた。羽維は縁があり、悪天候によりしなやかに育った庭の花々が科学者の手に渡り、日進月歩の進化を遂げ始めていた。
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