ぎゅっとしたら、いただきます

著者 : 蒼衣梅

祖母の営んでいたおにぎり屋を継いで二年目。
ある日、店先で、少し冷たい秋の雨の中、サンダルに素足、薄い長袖Tシャツの野良猫のような人が雨宿りをしていた。
あまりにも寒そうだから、中へと招いて長靴と傘を貸してあげると、翌日、返しにやって来て。するとその次の日……ゆっくり繋がる毎日三時過ぎの小さなおしゃべり。
優しくされることに不慣れで、怖がりなその人を愛しいと思うにはそう時間はかからなかった。好きだと自覚するのはとてもたやすかった。
優しくない場所にずっといた君を何より大切にしたいと思うのは、とても自然なことだった。

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